戦前・戦後の捕鯨の歴史が日本という国に残したものは何だったのか
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現代の東京を舞台に、北の海に材をとった『くじらの墓標』に対し、本作では捕鯨の伝説の残る東南アジアの島を舞台に、漂流する日本の鯨捕
りたちが自らのアンデンティティを問い直します。
本作は、その続編とも言うべき、くじらと人間の関わりから発した考察をもとに、幻想と現実の交差する世界を描く作品です。
そこは、時代も空間も超越した「海」。数日間だろうか、それとももっと長い間なのだろうか。一艘のサバニ(小船)が漂流している。銛が命中し
たものの、息の根を止めることができぬままに手負いのクジラに引き擦られ、海をさまよう鯨捕りたちの姿がある。ここは海賊の出没する海峡な
のか、それとも海の亡霊たちの集う海溝の真上か…。幾つかの昼と幾つかの夜を経て、彼らが出会うものは何か…。
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そして、もう一つの物語がある。第二次大戦下、戦線から離脱し、南洋の島に辿り着いた日本軍の兵士たち。その島には、戦火を避けて生き延びる一族がいた。マッコウクジラのいる南の海で、生き延びるため、そして島の伝説の“悪い因果”を断ち切るため兵士たちは捕鯨に挑む。言葉を共有できない日本兵と島の民、彼らが“鯨を捕る”という作業を共有するなかで獲得したものは何だったのか…。そしてそこに上陸してきた連合軍側の兵士たち…。幻想と現実の混じりあう中で、物語は予期せぬ終焉を迎える…。
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アジアの戦争の記憶、そして政治経済の現実の中で、捕鯨の歴史から二十世紀を見直すダイナミックな叙事詩。戦前・戦後の捕鯨の歴史が、日本という国に残したものは何だったのか…。
本作では、鯨にまつわる幻想と問題意識をさらに深く掘り下げる一方、坂手洋二と燐光群が初めて直接的に〔アジア〕〔戦争〕〔昭和史〕の現場にアプローチを試みます。
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揺れ動く社会状況のただ中で前衛的かつ根源的な実験作業を続けるインドネシアの演劇人と、実験精神と表現の成熟を併せ持つ燐光群メンバーとの出会いにより、これまでにない魅力的な作品が期待されます。
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●公演日程●
■11月23日(木)〜12月11日(日) ザ・スズナリ
■12月15日(金) 名護市民会館大ホール
■12月16日(土) 読谷村 文化センター鳳ホール
■12月20日(水)・21日(木) 那覇パレット市民劇場
■問合せ/燐光群 TEL. 03−3426−6294
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