ルノワール展・異端児から巨匠への道/ブリヂストン美術館


ルノワールはおそらく悲しい絵を一度も描かなかった唯一の巨匠だ 

―オクターヴ・ミルボー


 ルノワールの絵画は人生の苦しみ、悲しみを超えて見る者を優しく包み込みます。きらめくセーヌ河、風そよぐ草原、少女たちの一瞬の微笑、そして「光を内側にたたえた」かのような裸婦…、すべてが幸福感に満ちています。

 しかし私たちは本当のルノワールの傑作を前にしたときはじめて、彼の絵の幸福感、充実感が少女たちの微笑だけではなく、実はその独創的な色彩と筆づかいによって実現していることに気づくのです。この展覧会では、これまでほとんど印刷や映像でしか見ることができなかった代表作の数々をお届けします。ルノワールの真価を再発見していただけると幸いです。

 今回の展覧会では、ルノワールのもっとも創造的だった20年間、つまり1870年頃に始まる印象派時代と1880年代の古典的時代に出品作品を限定しました。これは画家の30代、40代にあたります。彼は長命かつ多作で、60代の後半に梅原龍三郎ら日本の画家たちの訪問を受け、以後日本の近代洋画にも深い影響を与えました。同時に日本には後期の作品が多数もたらされたので、私たちにはルノワールの円熟期の絵画がとてもなじみ深いものになりました。その反面、彼がより意欲的だった1870年代、80年代の、鮮烈と言っていいくらいの作品の質の高さを、私たちはあまり実感する機会がありませんでした。

 この展覧会は1870年、まだ彼が全面的に印象派の技法を採用する前のサロン(官展)入選作(水浴の女とグIリフォンテリア》(サンパウロ美術館)から始まります。これ以後彼は印象派の中心的メンバーになり、前衛あるいは異端児としての時期を過ごします。1880年代になると古典をひとつのよりどころにして絵画の方法を再確認しようとします。この時期にはつねに果敢に新しいことを試み、一点−点に職人的な手わざを凝らして高い芸術性を実現したのです。彼が巨匠として認められるのは1892年に(ピアノを弾く少女たち》(オルセ−美術館)が国家買上げになって以降であり、展覧会はこの作品をもって幕を閉じます。


本展覧会は油彩50点あまりと、素描など15点ほどによって構成されます。この中で日本で初公開になる主な作品は次の通りです。《アヒルの池》(個人蔵)、《ルグラン嬢》(フィラデルフィア美術館)、《ぶらんこ》(オルセー美術館)、(カフェにて》(クレラー=ミュラー美術館)、《洗濯女》(シカゴ・アート・インスティテュート)、《シャトウーの舟遊び》(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)、《牧神の宴》(個人蔵)、(桃のある静物》(メトロポリ夕ン美術館)、《波》(ディクソン美術館)、《ポール・アヴィランの肖像》(ネルソン=アトキンズ美術館)、《ブージヴァルのダンス》(個人蔵)、《ヴァルジュモンの子どもたちの午後》(ベルリン・ナショナル・ギャラリー)、《アリーヌ・シャリゴの肖像》(フィラデルフィア美術館)、(葡萄摘みの昼食》(アーマンド・ハマ−・コレクション)、《サント=ヴィクトワール山》(イエール大学美術館)。

東京展 2月10日(土)〜4月15日(日)

■時 間/10時〜20時(入館は19時30分まで)
■場 所/ブリヂストン美術館(東京都中央区京橋1〜10〜1)

■休館日/毎週月曜日 ただし2月12日(月)は開館
入館料一般 1300円(1100円)大高生 1000円(800円)
        中小生500円(300円)
※( )内は前売り、夜間割引及び15名以上の団体料金
※18時以降は( )内の夜間割引料金でご覧になれます。
※前売券の発売は2月9日まで。(以降当日券)


○名古屋展 4月21日〜6月24日 名古屋美術館

■問合せ/03−3272−8600 (ハローダイヤル)

『マイソフトニュース』を他のメディア(雑誌等)にご案内下さる節は、当社までご連絡願います。
Copyright(c)1999-2001 Mysoft co. ltd. All Rights Reserved.