【宇宙堂とは】
「プロデュース公演」の長所と「劇団」の長所をミックスし渡辺えり子が旗揚げする、新・演劇ユニット。公演毎に、その作品に合った実力ある俳優にゲストと常に活動を共にするメンバーを3〇〇は、‘地球’を意識していたが、舞台に携わる人間一人一人が自立した宇宙であるようにとの願いを込め、『宇宙堂』と命名された。
【『星の村』梗概】
「星の村」は、以前、渡辺が生まれた村の事を書いたエッセイに付けたタイトルでもある。日本人の原風景としての“村”である。
お話しは、日本のどこかにあったであろう架空の農村と、現代の東京を舞台に繰り広げられる。
主人公は、中年の元・女教師(もたい まさこ)。彼女は教師として、教育とは何かという壁にぶつかり、異常なほどの責任を感じて職を辞した。また一方では都会の生活にも疲れている。この都会で生きる中年にさしかかった主人公の人間としての悩み、苦しみを通じて、現代の日本人が抱えている様々な問題が浮きぼりにされる。
自然と共存して生きていくべき本来の人間の姿が都市の中で歪み、都市の発達がその歪みを隠蔽し、のっぴきならない状態に追い込まれている日本。対して、自然の中で自分が食べるためだけに耕し、あらゆる自然と共生できる場所として、“星の村”は登場するのか?!元・女教師の命運は?!
歌と踊りと笑いを交えた楽しい舞台。だが、私たちは、舞台を笑いながら、渡辺えり子が放つ現代の日本への警鐘を心の中で聞く事になる。
【「演劇少女」渡辺 えり子】
劇団3〇〇の解散当時、もう芝居はやめて歌手活動に専念しようと思った。歌手なら1人でテープレコーダー片手に、市町村を歌って回れると思い込んだのだ。北の港町、南の温泉地に、すっかりやせて、黒い服を着た自分が、暗く歌う姿を思い浮かべ、涙したものだった。
しかし、現実は違った。依頼される様々なジャンルの仕事と格闘しながら寝ずに働く自分がいた。しみじみ泣き暮らす時間はまるでなかった。しかも益々太っていった。そして、解散したら消えるだろうと考えていた地獄のような苦しみ、悩みは、解散後、逆に膨張し続けていったのだった。
世の中は昔も今も厄介で、その中で生きるということの不確かさや絶望感は益々胸を縛るのである。正義も薄れ、大人達も汚れてみえる。そして私もそんな大人達の一員として、この社会の未来をになっている。
社会の中で社会と向き合う時、やはり私の表現方法は演劇である。
解散後、劇場の客席に座りながら、山形から芝居をやりに上京してきた十八歳の頃を思い出していた。古里で観た舞台が、傷付きやすく、生きづらい私を何度救ってくれたことか。そして今でも演劇によって勇気を得ている自分がいた。解散後に働いたお金で、稽古場を作った。稽古場に住みながら、また厄介な作業を始める。友人達はきっとまた私の愚痴に付き合うことになるだろう。
しかし、四十六歳の演劇少女がいてもいいはずである。
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