【 テーマは 「偶像」 】
ストーリーの根底を流れるのは 「偶像」 というテーマです。皆さんには、子どもの頃に自分の両親や、学校の先生が偉い人だと思い込んでいた経験はないでしようか?
それが大人になって 「あれ、うちの親父って、けっこうアホ?」
だとか、子どもの頃の憧れはなんだったんだ?と、思ったことは…
「乙女回廊」 という芝居で迫求していくのは、そんな人間が勝手に思っているイメージの差についてです。ずっと好きだった人、憧れのスポーツ選手、アイドルや歴史に残る偉人…。そんな人たちの実際の姿に触れた時
「えっ、こんな人やったん?」 「誰がなんと言おうと素晴らしい!」
「幻滅や…」 「親近感わくなあ」 と、それぞれが思う、その落差。すごいと思っていた人が、時とともにそうではなくなっていく現実。その逆もまた、人間にはおこり得ます。小人物を、大人物だと勘違いすること。
そんな、人の数だけある 「思いこみ」 の差を描けたらと思います。
【 男が女を、女が男を演じる、奇妙さとリアルさ
】
男女入れ替え劇では、重くなりがちなテーマを扱うことが多いのですが、それを男と女の役者を入れ替えて演じます。演出のわかぎゑふは男と女を入れ替えることによって、役者たちにストイックな役作りを迫求していきます。
本来、男が男を演じるとき、あるいは、女が女を演じる時にはある種の欲が生じます。
「激しい女性」 の役をもらうと、女優はその中に、喜怒哀楽いろいろな感情を見いだそうとするものです。しかし、異性の役をふられると、役者は複雑な感情移入以前に、ある意味、潔くなれます。
そのことが、 19世紀を描く時代劇にとても有効だと考えるのです。
男が男らしく振る舞った時代、女が女らしく振る舞うことを強制されていた時代だからです。
|