幸田家の人々/東京近代文学博物館

左から(青木)玉・文・露伴
(角川書店 提供)
  最近は世の中何もかもスピードが速くなっているとは思いませんか?
 速いというのは便利なことも多い反面、ゆったり情緒に欠けるような気がします。
 毎日の日常生活の中で、心身共に寛ぎたい方にお勧めしたいのが、今 「東京都近代文学博物館」 で開催されている 『幸田家の人びと』展です。今よりも時間の過ぎるのがゆっくりとしていた頃に戻って、この “ゆったり情緒” が味わえます。

 展覧会では、明治時代の文壇で、尾崎紅葉と共 に 「紅露時代」 を築き上げた幸田露伴の生い立ちとその文筆活動が、娘 (幸田文)、孫(青木玉) らへと受け継がれていく様子を、当時の文献や写真、自筆の手紙類や朱の入れられた原稿、愛用の品々等を通して知ることができます。
 板塀や生垣に囲まれて、家もほとんどが木造の家屋だった時代。土と木の匂が満ちていた時代。中高年には郷愁を、若い人には歴史を感じる良いチャンスかもしれません。

  愛用の品々の中でも特に 5、6cmに “ちびたエンピツ” (今では見ることも、聞くことすらもなくなった) が、何十本もおせんべいか何かの平たい空缶に残されているのを見た時に、幸田文という人をとても好きになれそうだと感じました。読書家ではなかった私には露伴の旧仮名遣の文章を読みこなすのはちょっと辛い気もしますが、この展示によって国語の教科書で知った明治の文豪が身近に感じられるようになったのは確かです。

  脳の老化防止には読書が一番簡単な方法なのだそうです。この秋、多くの人々に読み継がれてきた文筆を改めて読み直してみる、というのうはいかがでしょうか。

 会場である東京都近代文学博物館は、旧加賀藩前田家の第16代当主前田利為氏の邸宅 (明治初期の洋館) がほぼ当時のままの姿で使われているので、今回の展示内容の時代へタイムスリップしたように、心地良く溶け込めることでしょう。

 前田氏の洋風、和風二棟の屋敷と庭園は、約 4ha の敷地ごと、昭和 42年から目黒区立駒場公園として公開されています。展示を見終えた後はのんびり散策して、心の隅々までリフレッシュしてみて下さい。
                            〈大津くみ子 記)

【東京都近代文学博物館】

■東京都目黒区駒場4−3−55 (駒場公園内)
 TEL 03−3466−5482(事業) 03−3466−5150(事務)
 FAX 03−3466−5195
■入場無料
■開館時間=9:00〜16:30
■休館日=毎月第1・3月曜日(休日の場合は翌日)
       12月 28日〜1月 4日
■交通=京王井の頭線 「駒場東大前」 駅・小田急線 「東北沢」駅より
      徒歩 10分

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