『恋愛日記」と『屋上のひと」論評      七字英輔(演劇評論家)

 考えてみれば、80年代とはおかしな時代だった。右上がりに成長続ける経済下で、誰もが浮き足立っていた時代。演劇界では、「世界は喜劇に傾斜する」などと謳われ、実際に 「喜劇」 ばかりがはやった。

 竹内銃一郎 『恋愛日記』 も、北村想 『屋上のひと』 も、そんな時代状況の中で生まれている。 ただしこの 2作が他の凡百の 「喜劇」 と様相を異にしているのは、そこに醒めた、時代への批評意識が刻みつけられているせいだ。

 松本修が注目した 2本の戯曲に共通しているのは、人間存在の小ささ、軽さ、滑稽さ、またその故の哀しさだろう。 それは80年代という時代がもたらした人間への省察であるが、21世紀を迎えても、その省察が少しも古びていないどころか、ますます現実味を帯びて実感されるようになった。

 松本が80年代を代表する 2つの戯曲を、どう演出してみせるのか、注目してみたい。

                                日程・開催場所など問合せ⇒

『マイソフトニュース』を他のメディア(雑誌等)にご案内下さる節は、当社までご連絡願います。
Copyright(c)1999-2001 Mysoft co. ltd. All Rights Reserved.