向井潤吉 民家その造形の美

《六月の田園》(岩手県岩手村)1971年
 たとえば、岩手県の南部曲屋(なんぶまがりや)は、家族同様に大切にされていた馬が、人と一つ屋根の下に暮らすための家屋として変遷してきたものです。
 山形県朝日村などの養蚕を営む農家では、庭先には桑が育てられ、養蚕に適した環境をつくるために、屋根裏を幾度にも亘って改造してきました。
 また、豪雪地帯である岐阜県の白川郷では、屋根を急勾配にすることで、雪の重みから家を守ろうとする工夫が生まれています。

 このように、生活に寄り添う住まいには、自然と対峙した先人たちの知恵が幾層にも重なり合っています。向井潤吉の画心を刺激し、民家のある風景への共感を呼び起こしたのも、自然と人が共生していくために築きあげた相互関係の歴史が民家に宿っているためなのでしょう。

 眼前の風景を単に画面に描きとめるのではなく、その地に生きてきた人々の自然との関わり、そしてその背景までをも捉えようと、それぞれの土地をつぶさに見つめながら絵筆を走らせる。
 向井潤吉のそうした作品一つひとつには、消え行く日本の風景を借しみ、それを描き残そうとする画家の深い感概と、真撃な眼差しを感じることができます。

 人々が生活を通じて生み出した創意工夫は、民家に用の美をもたらし、それは実直な生命感を漂わせています。民家は人智が自然と調和し生み出した美しい造形だといえるのではないでしょうか。

 
  向井潤吉 民家その造形の美

■会 期=2005年7月30日(土)〜11月28日(日)

■休館日=毎週月曜日(ただし休日と重なった場合は翌日)、年末・年始

■開館時闇=午前10時〜午後6時(入館は5時30分まで)

■開催場所=向井潤吉アトリエ館(世田谷区弦巻2-5-1)

■交 通=東急田園都市線駒沢大学駅西口下車徒歩10分

■観覧料:一般200円(160円)、大高生150円(120円)、中小生100円(80円)
     65歳以上及び障害者の方100円(80円)
  ※( )内は20名以上の団体料金。
    小・中学生は土・日・祝日およぴ夏休みのあいだは無料。

■問合せ=同館TEL.03-5450-9581又は世田谷美術館TEL.03-3415-6359
   
















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