「由縁堂書店」―その名の由来

 井の頭線池ノ上駅から南へ徒歩2〜3分の『由縁堂』書店は、昭和24年に開業して以来の歴史を重ねた。 開店当時の終戦まもなく、池ノ上駅近くは、ただの瓦礫の広場という感じだったそうだ。そんな中にお店が2、3店、その一軒が、この古本専門店『由縁(ゆかり堂』書店だった。

 屋号『由縁堂』は、演劇の好きな現店主、相川章太郎さん(写真)が、歌舞伎の作品〈助六由縁江戸桜〉からとったもので、“お客様とのゆかり”―由縁が深まるようにという願いをこめてつけられたものだ。

 「御蔭様で屋号の通り、お馴染のお客様や、ふらっと立ち寄ってくれる人とのさまざまな出会いがあります。特に印象に残るのは、代沢3丁目に在住していた、故佐藤栄作元総理。総理大臣になる以前、秘書の方から連絡があって本の整理に、時々伺いました。 それらの本の中に、元総理大臣吉田茂著『回想十年』全四巻があり、本の一冊一冊が、『献呈 佐藤栄作殿』吉田茂と、墨で署名されておりました。今では、とても貴重なほんとなりました。」と相川さんは語る。

  その本は“宝物”かもしれない

 生活の上で区切りとなる季節--卒業、入学、入社と心に機するところがあり、本の整理などもあろうかと思う。
 そんな時は、価値ある本をみすみす捨ててしまわぬよう『由縁堂』に相談してみてはどうだろう。どういう本があるか連絡すれば、長年の経験から本として価値を判定し、価値あるものであれば、取りに来てくれることもある。特に演劇書や趣味の本は大歓迎とのこと。時代のせいか、法律、経済書、教科書などの専門書は、引き取り手が少ないので価値がないようだ。

 店には、小説、漫画本、写真集、雑誌などあらゆる分野の本がびっしり並んでいる。 相川さんの好きな歌舞伎、文楽などの貴重な本も多く、若い人むけの演劇書、新しい人の戯曲や評論なども、沢山品揃えされている。


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