幸田文」展

 
 昭和54年12月自宅庭にて(撮影:片岡露満)
 【開催趣旨】

 父・幸田露伴の想い出を綴り40代でデビューした幸田文(こうだ・あや1904~1990)は、『流れる』『おとうと』がべストセラーとなり、50代半ばに早くも『幸田文全集』が編まれるなど一躍流行作家となりました。
 しかしその後は精力的に執筆活動を続けながらも、ほとんど自作を本にまとめていません。60歳を過ぎて、奈良斑鳩の法輪寺三重塔再建のために奔走し、さらに70歳を超えて全国の樹木や地崩れの現場を訪ね歩きました。『木』や『崩れ』などの晩年の作品が刊行されて読者を驚かせるのは彼女が86歳で没した後のことでした。
 幸田文は後半生の行動のきっかけを「種が芽を吹いた」と表現しています。
 「心の中は知る知らぬの種がいっぱいに満ちている、と私は思う。何の種がいつ芽になるか、どう育つかの道筋は知らないが、ものの種が芽に起き上がるときの力は、土を押し破るほど強い」(『崩れ』)
 死の床を迎えた肉親を看取ること、「みそっかす」であった不遇な自分の内面を見つめることから出発し、やがて胸の中の「たね」をひとつひとつ取り出し、執筆の幅を広げてゆきます。日々の暮らしや人事にとどまらず、草木や動物、揺れ動く大地に至るまで、心を寄せた対象に身体ごとぶつかり、命あるもの全てがかかえる哀しみと強さとを描き出す特異な文学の境地を切り拓きました。
 本展は、幸田文を単独で取り上げる初めての本格的な展覧会です。父を看取る40代まで、一人の無名の女性として生きた彼女の前半生に蒔かれた「たね」が、作家・幸田文の中でどのように力強く芽吹いていくかを、初公開を含む原稿、書簡、愛用の着物や父・露伴の遺した書など資料約300点を通して見てゆきます。
 共感する力が、身近なもののなかにも愛しむべき無数のものがたりを発見させてくれることを幸田文の文学は教えてくれます。そして、行動する力が、折れそうになる心と身体を一歩前に進ませてくれることも。

会 期 2013年10月5日(土)2013年12月8日(日)
休館日 毎週月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館、翌日休館)
開館時間 午前10時〜午後6時(入館締切は午後5時30分)
会 場 世田谷文学館2階展示室(田谷区南鳥山1~10~10)
アクセス 京王線「芦花公園(ろかこうえん)駅」南口より5分/京王バス(歳23系統 千歳船橋~千歳烏山)「芦花恒春園(ろかこうしゅんえん)」下車5分/小田急バス(成02系統 成城学園前駅~千歳烏山駅降車場)「ウテナ前」下車1分
入館料 一般700円(560)、高校・大学生500円(400)、小中学生250円(200) 65歳以上・障害者350円(280) *( )内は20名以上の団体料金
問合せ 世田谷文学館 TEL.03-5374・9111

















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