『桑原甲子雄の写真 トーキョー・スケッチ60年』展

 「写す喜びは歩く喜び」と語っていた写真家・桑原甲子雄(くわばら・きねお 1913〜2007 )の『桑原甲子雄の写真 トーキョー・スケッチ60年』展が今、世田谷美術館にて開催されている。

 展示解説によると彼は洗練された下町情緒よりも猥雑な街並みを好んだそうで、作品を見てまわると、写されているのは下町の賑々しい商店や軒先の子どもたち、食べ物屋や商店などにそのままカメラを向けたような作品ばかり。“桑原の個人的趣味”の写真展かのように思える一方で、彼が日常の中に見える東京の何気ない風景にこだわっているのが、そこに、美しく撮ろうとか、いい写真を撮ろうという撮影者の意図的なものはみじんもないことが、次第にわかって、桑原の被写体に対する愛情を感じさせる。

 「生活の匂ひ、感情は近頃の小型カメラでなければ掴み取ることができない」(「スナップ再認識」『フォトタイムス』、1936年10月号)ともいう彼はそのことばどおり、「東京」という町に漂う生活臭、空気感をまるごとカメラに収めている。昭和のノスタルジックや色濃く映し出された人々の生活を見ていると、その時代のこの人たちに出会いたいという思いが湧いてくる。そこにある風景がまるでいまにも呼吸し動きだしそうな感じさえしてくる。
 
 砧公園内の世田谷美術館案内板
 世田谷のボロ市もカメラに収められているが「この写真のころはまだ文字通りボロの名にふさわしく、あらゆる古物が山のように並べられていて、集る人と物との間に言いようのないぬくもりがあった」といった感想から、またパリや満州での写真もあるがそこでも彼が「異国」というフィルターを通して、日本そしてより一層「東京=下町」に思いをはせていたことが伺える。

■会期=2014年6月8日(日)まで
■開館時間=10時〜18時(展覧会入場は17時30分まで)
■休館日=毎週月曜日
■会場=世田谷美術館1階展示室(〒157-0075世田谷区砧公園1〜2)
■観覧料、交通、その他問合せ=電話03・3415・6419












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