「『本多劇場』生みの親、本多一夫さん」

ゲスト出演、その舞台にたつ
 一歩踏み入れるとそこはまさに「ザ・演劇」の世界。 7月23日の本多劇場は、演劇の町シモキタの「本多劇場」生みの親である本多一夫さん(写真)がゲスト出演するということでザワザワとした雰囲気。ファンの期待感が満ち溢れ活気でいっぱいであった。
 「あと45年頑張る」
 「いったいどんな2時間が待っているのだろう」と胸を膨らませ周囲を見渡す。 出演者の知り合いなのか、自身も役者をやっていそうな個性的若者の姿がちらほら。 と思えば芝居の常連風のおじさんたちに、お着物姿のご婦人から学生鞄の中学生などと偏りなく、まさしく“老若男女している”。なんと客層の幅広さとバランスよいことか。

 演目は『モトイヌ』。 開演すると、一匹の愛すべきおじさん顔のワンちゃん「シロ」が、自分の人生で起こった不思議な出来事を語り出す。 シロは一度、人間になったことがあるというのだ。

 材木商のご主人がライバルの材木商を殺した罪を着せられ、現場に居合わせたシロは懸命にご主人の無実を吠える。 が、人間にシロの言葉は通じず、結局家を飛び出すことになってしまった。 後輩犬である野良の「クロ」と共に過ごすシロ。 どうしたらよいのかと途方に暮れる二匹が知ったのが、犬から人間に転生したという先輩犬「ポチ」だった。 ポチの導きの下、人間になったシロとクロは、家の奉公人と娘さんの恋の成就の片棒も担ぎつつ、ご主人の罪を晴らし事件の真相を暴く大活躍。

 最後は一波乱あって嗚咽を漏らす人もいたが、わかりやすい、 ただただ楽しいお芝居に客席はよく笑っていた。 尻尾が電動で振られる仕組みになっていたり、もこもこワンちゃんの愛嬌ある芝居にもぐっと引き込まれ、観客の心は開演直後から鷲掴みにされていた。

 作中で本多さんが務めたのは、シロ・クロの二匹を導く「モトイヌ(元・犬)」の「ポチ」。
  どうすれば人間になれるのか、「ただ、強く願えばよい」。
 なぜ人間になったのか、「神様がそう思ったからじゃろう」。
 達観したというか、なんともゆるっとしたポチの様子に、「犬時代はおとなしくのんびりマイペースなポメラニアンか、チワワか」といったような印象が浮かぶ。
 本多さんの肩の力の抜けたお芝居に愛らしさを感じてか、客席もコロコロ笑う。 終盤再び登場する頃には登場だけでお客さんがニコニコ。

 本多さんは7月11日に80歳を迎えた。 パンフレットに寄せているコメントには、“今回の『モトイヌ』が70歳最後のお芝居。 役者は25歳から70歳まで休止していたので、45年間を取り返そうとあと45年頑張る。 皆様応援してください”とあった。
 挑戦することを恐れない、しっかり芯の通ったその姿に、将来こんな70代であれたらと頭が下がる思いだ。
                               (鑑賞記たぶち)

 












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