「挫折ばかりしてきた私のような暦も、何かの足しになれば幸運である」


 世田谷文学館(写真左)で今、「水上勉のハローワーク 働くことと生きること」が開催されている。
 水上勉さん(写真右)の本の中の言葉や絵など約400点の品々で構成されているこの展示会では、「天職とはなにか?」「様々な仕事をとおして、どのように人は幸せになれるのか?」などを問い続けた、水上さん自身の生き方や思想がありありとみてとれる。


 作家のみならず様々な職業を経験している水上さんの生き方をみると、順風満帆とはいえない複雑な人生のようにも思えるが、これも一つの生き方であると訴えかけてるようだ。
 今の時代のトレンドとして安定を求める人々は少なくない。むしろ「安定した就職というものが今現在の幸せだ」と思っているように感じる。
 「自分が何に向いているのか。 何を職業としたら貧乏ぐらしでも満足か、ぐらいの境界線は持って欲しいと思う」。「働くことと生きること」の中で述べている水上さんのこの言葉は重く伝わってくる。 私達に幸せの見出し方を教えているようだ。

 展覧会では火葬場で働く老人の話を取りあげている。
 この老人はやりたくて火葬場で働いているわけではなかったが、遺体を焼いた後のかまどに残った遺灰はコスモス畑に蒔くのだそうだ。 「どんな人間でも焼かれたあと、皆平等にコスモスになるから、愛おしく思う」と言う。
 水上さんがこの話をピックアップしたのは「どんなに過酷な仕事でもその中で愛おしさを見出す老人に感銘を受けた」からである。
 沢山の職業についた経験のある水上さんの生き方や老人の話を目耳にすると、幸せ探しとは自分に合う職業探しより、どんな職の中にも自分の幸せを見出す“心のあり方”が大事なのだと思えてくる。

 水上さんの紆余曲折な人生をみて、その当時は大変だったんだろうなとは思うものの、振り返ってみてみれば良い人生じゃないかと太鼓判を押すことができるし、「今」目の前にあるものをもっと大事にしなくては、という心境を醸し出してくれる。
 「私のような挫折ばかりしてきた男の暦も小さな標べになるかもしれない。 何かの足しになれば幸運である。(働くことと生きること より)」といった作品の中にある言葉一つ一つが「今を迷う」人達に優しく、生き方というものを指し示しているような、そんな展示会である。        (西川)
 
「水上勉のハローワーク 働くことと生きること」
会 期 ~2014年12月21日 (日)
休館日 月曜日(但し11月3日・24日は開館、11月4日・25日は休館))
開館時間 10時~18時(入館は17)時30分まで
会 場 世田谷文学館2階展示室(世田谷区南烏山1-10-10)
アクセス ▼J京王線芦花公園駅南口から徒歩5分 ▼小田急線千歳船橋駅から京王バス(歳23系統「千歳烏山駅」行)「芦花恒春園」下車徒歩5分
観覧料
一般700円(560)、大学生・65歳以上500円(400)、高校生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金
*障害者手帳をお持ちの方の介添者(1名まで)は無料
問合せ TEL:03-5374-9111  [ファックス]03-5374-9120

















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