「特集・戦後70年と作家たちⅡ」


  世田谷文学館(写真)で開催中の後期コレクション展「特集・戦後70年と作家たちⅡ」は、世田谷文学館収蔵の作品からセレクトされた世田谷にゆかりのある作家たちの、とりわけ終戦から戦後の期間に注目して特集を組んだ展示である。
 「戦後70年が経ち、圧倒的多数になった戦争を知らない世代にとって、平和な生活が当たり前で、生きるか死ぬかを突きつけられる戦争は遠いことのように感じるかもしれません。――しかし、将来への不安感や閉塞感で悩む若者が増えつつある現代において、本展が過去の戦争とこれからの未来について自らを考える機会となり、平和を願う心を後生に伝える一助となれば幸いです」というのがキャプション。
                        写真:世田谷文学館

 まずは「――人間は墜ちるものだ。戦争にまけたから墜ちるのではない。そして人の如くに日本も亦墜ちることが必要だ」と坂口安吾。彼は大正時代に下北沢に住んだ小説家だ。
 坂口安吾、三島由紀夫に続いて紹介されていたのは、日本のSFの父といわれる海野十三。世田谷の自宅に防空壕を構えた十三は、1945年という年が過ぎるとき、こんな一文を記している。
 「昨年は『敵機なお頭上に来りて年明くる』と一句したりけるが、本年は敵機もなく、句もなく、寝床に潜り込む」(海野十三「敗戦日記」)
 今までの苦しく残虐だった毎日が過ぎ去り、今度は逆に嘘かと思うほどの平安な新年を迎えようとしている。希望、平和、そんな新たな年、新たな一日がはじまるのを生まれ変わる思いで迎えながら、只、昨日と同じように朝が、しかし全く異なる意味を持った新しい陽が上ろうとしている…そういった当時の模様がその何気ない一文にじみ出ていた。
 失うものは何もなくなった日本。そこから新たな一歩を踏みしめていくことを佐藤愛子は「自由」と捉えていた。終戦を迎えGHQの管理下になってそれまで検閲でがんじがらめであった文学や芸能が、息を吹き返したかのように「自由」の花を咲かせていった様子が、大衆娯楽雑誌の数々からうかがえる。
                                (たぶち)
 
会 期 ~2016年4月3日 (日)
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館)
開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
 ガイダンス  昭和20年8月15日、終戦。廃墟と化した国土から私たちの先達は再出発の決意を持って立ち上がり、目覚ましい復興を遂げ、全世界を驚かせました。あらゆる価値観が激変した混沌の時代を、作家たちはどのように見、生きたのか。そして、再生への道のりへと向かったのか。
 前期コレクション展での戦中を描いた作家に続き、後期では終戦と戦後を描いた作家たちの資料からあらためて考えてみます。 
会 場 世田谷文学館(世田谷区南烏山1-10-10)
アクセス

京王線「芦花公園」駅南口より徒歩小田急線「千歳船橋」駅より京王バス(千歳烏山駅行き)乗車「芦花恒春園」下車徒歩

入館料
▼一般=200(160)円 高校・大学生=150(120)円 小・中学生=100(80)円     65歳以上=100(80)円 障害者=100(80)円
  ※( )内は20名以上の団体料金。
問合せ TEL.03-5374-9111 FAX.03-5374-9120

















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