「つるかめ大作戦!」

稽古風景 2月7日 於:ホンダスタジオ (中央が本多氏)
 
たぶち:記    
                            
  「待って!待ってくれ!」の本多一夫氏の台詞から舞台ははじまった。
 今年で第26回を迎えた「下北沢演劇祭」。入場無料の区民上演グループBは、シモキタ演劇界をつくりあげた本多一夫氏をはじめ、イイオトナ?まだまだ達者なシニア層の区民出演者が充実していた。
 開場してから2年とまだ新しい小劇場B1に一歩入ると、昨年の区民上演作品「座敷じいじ」よりも、舞台空間と客席が広く感じられた。バックの壁を立てたのみのシンプルなセット効果なのだろうか。
 客席を埋めているのはまさに老若男女揃い踏みといった面々。開演前のざわつきはリラックスして心地よい空気に包まれている。開場から前説までを担う若いスタッフに支えられいざ開演。明かりが入って一呼吸置くと、本多氏の心の詰まった“その一言”で、一気に物語の世界に引き込まれた。

 今回の作品はズバリ「つるかめ大作戦!」(したたかに、しなやかに、老いてみせましょう)
 刑務所を出所した「マエあり、身寄りなし」のお年寄りたちが、昨今問題の多い特別養護老人ホームの実態調査のため、とある施設で訓練を受ける、という話。それぞれの過去、因果、個性が紹介されながら、立派な「特養スパイ」となるべく日々が過ぎて行く。

 私にはとにかく出演者の姿がまぶしかった。実は今回は事前に稽古場での出演陣の様子を少々拝見、本番を控える出演者たちの汗、演出家の采配を目の当たりにしていたのだ。その稽古場ではまだ振り切れていない様子だったのだが、今、舞台上では皆が皆、「一体その後何があったのだろう!?」と思うほどに、それぞれがいい意味ででこぼこしていて、十人十色の愛らしく憎めないキャラクターになって生き生きとしているではないか。
 動きも多く、歌も歌う。ばらける可能性のあるシーンのつなぎ目もよくまとまっていて、流れが止まらず飽きさせない。出演者が客席にコンタクトをとってくるシーンもあり、客席を巻き込むエネルギーに満ちた105分であった。

 終演後はすぐさま「すごい!」「おもしろかった!」との声。なおそれを越える「クオリティが高まっているなあ」という思いに包まれ「よいものをみせてもらった」と感じて席を立った。

 終演後の本多氏の挨拶によると、今後5月、6月とシニアの役者陣で公演ができたらとのことだった。役者復帰後の本多氏の中には「前期、中期、後期、それから末期(!)高齢者にも演劇の舞台に立つ機会を」という思いが強くある。
 まさしく“つるかめ”のように末永く、今後も楽しみだ。









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