「うたごえ喫茶、やってます!」

  昨12月某日、本多スタジオプロデュース公演『うたごえ喫茶、やってます!』。
 開演前。 肩を並べて座る満員御礼の小劇場「シアター711」は妙に暖かい。 小さなうたごえ喫茶のセットに昭和歌謡が流れる劇場には、開演前の賑やかなざわつきがあった。 客席は高校生の姿も見えるが年齢層は高め。 会社員?シニアといった出演者の関係者が多い印象だった。
 5分前になると、これから物語の舞台となるうたごえ喫茶「ベネチア」に向かうところだという俳優が登場。 上演中の注意とともに、場を温めて歌の練習。 すでにあたたまっていた客席から拍手がわいてのスタート。 ミュージカル、音楽劇とはまた違ったうたごえの響く芝居。 ギターの生演奏に合わせ、一体何曲だったか、数多く歌われた。
  出演者の多くが下北沢演劇祭「区民上演グループ」に出ていた人々だった。 演劇祭では1人1人の持ち味を活かした上演だったが、それは今作でも健在。「瀬戸の花嫁」に合わせたフラダンスなど、ストーリーは一見突拍子も無い組み合わせがかえってうまくマッチして、ぎゅっとあたたかくなる。

  本多さんの役はうたごえ喫茶の常連客。 お店を切り盛りする三姉妹のおじいちゃんのような、身近で大切な存在だ。
  出てきて一番、その芝居のあまりにも自然な雰囲気に驚いた。 居住まいも決まり、仕草から台詞まわし、冗談を言って笑わせる様子が総て自分のものとなっていて、ぎこちなさがない。
 70歳になってから再び舞台上に乗るようになり、12年。 本多さんのここ数年の出演作、作品を重ねるごとに役者業が円熟していくようだ。
 ゴンドラの唄、リンゴの木の下で、丘を越えて、すみれの花咲く頃、月光価千金、東京節…。 最後は舞台に立って拍手を背に皆で歌い踊る姿に、いくつになってもハレの場があって、いつでもチャンスはあるのだと感じた。
  若い仲間たちとともに新しいことに挑戦し続けていく姿がそこにはあった。
                   (たぶち)












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