オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき

 三菱一号館美術館では5月21日(日)まで、オルセー美術館のナビ派のコレクションから、油彩約70点、素描約10点など合わせておよそ80点が一堂に会し、「オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき」を開催しています。


 19世紀末のパリで、ゴーガンから影響を受け、自らを「ナビ(預言者)」と呼んで、前衛的な活動を行ったボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジエ、ヴァロットンらを中心とする若き芸術家のグループ「ナビ派」の画家たちは、新たな芸術表現「近代都市生活の諸相を平坦フラットな色の面で表す装飾性と、目に見えないものを描く内面性――日常と神秘」をあわせ持ち、革新的な芸術活動を行った。

 「日本かぶれのナビ」と呼ばれるピエール・ボナールは、掛け軸を思い起こさせるような縦長のキャンバスを使用した作品や屏風を使った作品を作成しており、ナビ派の中でも特に日本に、浮世絵に影響を受けて、傾倒の様子がうかがえる。
 ナビ派の魅力は、日常的な風景を描く“親密性”。特に“親密派”と呼ばれるボナールとヴュイヤールは身近な人々をモデルにして、室内画を描き人々に親しみを感じさせる作品を作った。
 ヴァロットンの室内画は、人物や室内の絵が少し写実的に描かれているものの、どこか独特で不吉さや緊張感が含まれている異質な雰囲気をもっている。

 ナビ派のテーマに「見えない内面性」を描くというものがある。神秘的なものを題材にしていること、日常的な風景をそのままで捉えずに画家自身が感じたものを色や構図などで自由に表現していくことのようだ。「芸術家は可視できるものと不可視のものとの仲介者である」と、自分たちの感性で描いた作品は不可視な世界を写し出していると捉えている。
 例えばドニの「ミューズたち」という作品。9人のミューズ(女神)のモデルはすべて妻のマルトで、古典的な神話で用いられるような衣装ではなく現代的な衣装で描かれている。題材は女神という神秘的なものだが、妻をモデルにすることや、現代衣装を描いているといった、神秘的な絵や宗教画を描くというよりも、日常の風景に内面性を表現している。

 印象派ではなしえなかった「見えないものを描く」ことも追求している。単に抽象的にするわけでなく、見えるものと見えないものを融合するのが彼らの表現したかった内面性であった。それぞれの画風の個性は独特で異質だが、しっかりと現実世界も見据えて描いていて見る人を置いてきぼりにせず、むしろ心の奥に入り込んで伝えたいものを響かせて親しみを感じさせていた。
開館時間=10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
      ※入館は閉館の30分前まで
休館日=月曜休館(但し、2017年3月20日、5月1日、15日は開館)

会場=三菱一号館美術館(千代田区丸の内2-6-2)

アクセス=JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
問い合わせ=TEL03-5777-8600(ハローダイヤル)









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