「代表的な特徴は3点です」と星野晃司取締役社長(4枚目写真前列左から2人目)
「眺望性の向上」と、「車内専用Wi-Fiサービス」に「バリアフリー対応」だ。
1点目の「眺望性の向上」とは、運転台を2階にすることで、ロマンスカー伝統の展望席を前方後方の両先頭車にそれぞれ16席設置。既存のロマンスカー50000形VSEよりも30cmほど窓を高く大きくすると共にガラスを支える支柱の位置と形状を工夫することにより、眺望を格段に向上させている。
2点目の特徴は「車内専用Wi-Fiサービス」。GSEはインターネット環境も充実している。
車内では快適な無料インターネット接続環境を提供すると同時に新たに「Romancecar Link」という車内専用のコンテンツ配信システムを搭載。増加する訪日外国人旅行者に対応するため日、英、中、韓など全部で8言語に対応している。
7つのコンテンツのメニューがあり、なかでも「展望映像」は運転台に設置したカメラからの展望ライブ映像を配信し、車両内のどの席からでも臨場感ある展望ビューが楽しめる。
3点目の「バリアフリー対応」もこれまで以上に充実している。
案内用の点字や各種手すりの設置などバイアフリーを考慮した設備の他、改良型ハンドル形電動車いすでの乗車が可能で、4号車には最大で3台の車いすが乗車できる。
小田急線開業90周年を迎えて
「本年度は小田原線開業から90年、SE3000形の登場から60年という大きな節目の年度にあたります。
計画から50年、着工から30年かけた複々線も完成し、2018年3月からの新ダイヤでは新しい小田急として、通勤サービスの改善だけでなく、観光面でもより便利で快適な輸送サービスを提供できるようになります。
このような記念すべきタイミングに世代を越えて、伝統や思いを受け継ぐ新型ロマンスカーが登場することをたいへん喜ばしく思っております」。(星野社長)
「LSE7000形がもっていた特徴を現代的に置き換えて新たな眺望性を獲得しました」と岡部憲明アーキテクチャーネットワーク代表(4枚目写真前列右から2人目)
「先頭車両ではLSEがもっていた豊かなボリューム感というものを継承し、VSEとは異なった展望性を描きました。自分たちが飛び出しているような開放感というのを味わっていただけると思います」
大きな窓と荷棚のない車両
展望席のみならず、GSEは全ての座席が展望席というコンセプトで設計された。車両側面の窓の大きさを、VSEやMSEよりも30センチ高い100センチに。「大きな窓にぜひ注目していただきたい」。
特徴的なのは荷棚がないこと。4号車の除く全ての車両の荷棚をなくして、外国人旅行客の大きな荷物も置けるようなラゲージスペースを確保した。いわゆるインバウンド対応だ。また全座席の下に国内線機内持ち込みサイズのキャリーバッグ等の荷物が収納できるスペースを新たに作成。こうした工夫により荷棚がなくなり、女性や高齢者が重い荷物を上にあげる必要がなくなると同時に、より広い展望性と空間性を確保した。
こだわりの薄さ。快適で便利な座席シート
岡部代表が時間をかけ、こだわったのが座席の設計だ。空間に広がりをもたせるため、なるべく背を薄くしつつも、座り心地のいい椅子の開発に取り組んできたという。GSEの車体全体の形状を踏まえ、背は限りなく薄くしながらも、座席の幅はこれまでよりも10数センチ大きくなっている。
GSEのシートは前と後ろで表情が全く異なる。前面は造形作家の岡﨑乾二郎氏が手がけ、「あらゆる風景のなかを走り抜けていくロマンスカーのイメージ」をベースに、色彩豊かな模様のシートが完成した。
一方背面は、カバンがかけられるフックに飲料や冊子、PCやスマートフォン、傘も収納できるように工夫されている。これは観光からビジネスに至るまで、便利で快適、常にスッキリ見せるような仕掛けだ。
また各座席には電源コンセントがあり、スマートフォンやPC等の充電ができる。ひじ掛けにあるパーソナルテーブルはMSEよりも大きく荷重性能も上がり、旅行はもちろんビジネスにも重宝しそうだ。
水平線を流れるロマンスカー
岡部代表のさらなるこだわりが、VSE、MSEと続いてきたロマンスカーに対するデザインコンセプトのなかの「水平に流れるボリューム」という鉄道の独自性を強調して出すこと。
そこで、岡部代表は運転台ウインドウのすぐ下に前照灯、一番下の部分に尾灯を配置。また車体にあるほんの僅かな段差により、光が当たるとそこだけ輝いて見えるように設計。これらによって142メートルある車体が一つのラインとなって、水平に流れるように見えるのだという。
「水平線を強調したロマンスカーファミリーの車両、VSEの白、MSEのブルー、EXEαの銀、そしてGSEのオレンジが小田急線沿線の風景を切り取って走る、そんな新たな喜びを伝えたい」(岡部代表)
「史上初の59分です」と五十嵐秀交通サービス事業本部長(4枚目写真前列左から1人目)
2018年3月からの新ダイヤについて。
「GSEの登場により、展望車両のあるロマンスカーは、VSE、LSEと併せて3車種となり、これらの展望車両には土休日には、9時、10時、11時に新宿を発車する「スーパーはこね号」として運転、ノンストップで小田原を結び、終点箱根湯本に向かいます。平日は10時、11時に新宿を発車する「スーパーはこね号」として運行。どの時間にどのタイプの展望車両を運転するかは日によって異なります。
また観光をより長く楽しめるよう、土休日のスーパー箱根号は小田原まで現行よりも4分早い最速59分、箱根湯本までは現行よりも9分早い、最速73分で運行します。
新宿行きの特急ロマンスカーの発車時刻も繰り下げ、現行の土休日最終ダイヤ、箱根湯本20時:53分の発車を22時07分とし、1時間14分伸ばしましたた。
新宿から小田原までの1時間以内での運行は小田急開業以来初めてです。」(五十嵐本部長)
小篠ゆまデザイン(4枚目写真前列右から1人目)、特急ロマンスカー専用の新制服
2018年3月の新ダイヤでの運転開始にあわせ、全特急ロマンスカー乗務員専用の新制服が使用される。
デザインは、株式会社ユマコシノアソシエイツ代表取締役の小篠ゆま氏が担当。
「『心の豊かさ』をキーワードに、ワクワクする期待感と特別感、ロマンスカーでしか味わえない『お出かけの高揚感を高めるかっこよさ・憧れ』を表現いたしました。
乗務員の制服は、品性と正統性のあるシャープなデザインで、トップスのカラーはバーミリオンオレンジと相性のいい暖色系の淡いベージュを、ボトムスにはダークなチャコールグレーを起用。働きやすい機能もプラス。
乗客と接するアテンダントの制服は、清楚で明るい印象の紺色をメインに、バーミリオンオレンジをあつらえ、エレガントで清潔感あるデザインを意識しました。」(小篠代表)
小篠氏が「360度美人エプロン」と名付けたエプロンは、ラップ式のジャンパースカート風エプロン。後ろから見てもきれいなシルエットで構成しているという。
「この新制服が末永くお客様にそして乗務員の方々に愛され、新しく生まれ変わったスタイリッシュなロマンスカーと共に走り続けて欲しいと心から願っております」と笑顔で締めくくった。
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