「芙美子と関東大震災」展が新宿区中井2丁目の林芙美子記念館で開催されている。
「林芙美子記念館」は閑静な住宅街の中にある。同記念館は芙美子が新居として建て、実際に住んでいた。広い玄関、茶の間、寝室、書斎、アトリエ、自然の多い庭…、古き良き日本の家であった。
画家の夫・緑敏との創作活動がはかどる場だったのではないだろうか。
林芙美子の時代は関東大震災が起こっている。
当時の震災の写真が展示されており、地震発生時の奇妙な雲の写真や、潰れた家屋、焼け野原などの光景や、混乱しつつも左側通行を守る沢山の人が往来している写真、配給にきちんと列を作って待 っている姿などもあり、写真を通して、貧したときにも平等に行き渡るように協力している日本人の姿が伝わってくる。
展示には、震災について芙美子の「人間の立ち直る生命力に対するなんと逞しさよと言いたい。復興していく姿もまた私には何かを教えてくれるものがあったのです」との言葉があった。
また、物理学者、地震学者、随筆家である寺田寅彦が「人間がもう少し過去の記憶を忘れないようにする外ないであろう」と記してあった。何十年と前から大規模な震災が起こるたびに同じ事を繰り返している私たちに出来ることは、予防をする事や忘れない事しかない。そういった先人の注意喚起が作品などに残されている。
ギャラリーのしめくくりにある「近年の東日本大震災では7年経った今もなお帰還困難者、居住制限区域が残っている」との表示では、過去の震災や先人達から何を学んでいかねばならないのか、何をなすべきなのか、改めて考えさせられるとともに、大変だった記憶は薄くなり忘れ去られ同じ事を繰り返す無念を悟らせる展示会だ。 |