「居酒屋千草」
 
内藤新宿模型

 新宿区立新宿歴史博物館では、その昔「内藤新宿」と呼ばれた新宿の街にまつわる歴史を、様々な視点から展示紹介中。

 常設展示のなかに設けられた小さな特設コーナーでは、現在「新宿の酒場と文人」に着目した展示会を開催。9月30日までは、昭和11年から新宿駅東口で営業している居酒屋「千草」に寄せられた、文化人たちの色紙16点が飾られている。

 「居酒屋千草」は、その昔新宿で活気を見せていた「ムーラン・ルージュ新宿座」に近く、当時は出演するダンサーを周旋するプロダクションも兼ねていたそうだ。
 ムーラン・ルージュは、エノケン・ロッパといったスターが活躍する軽演劇が流行っていた時代、浅草の玉木座から独立した佐々木千里が「山の手のインテリ層をターゲットに」と開場させた劇場。屋根の上に赤い風車をとりつけ、次第に東宝などの劇団へスターが引き抜かれていくほどの人気劇場となった。戦後に閉館となったものの、「ムーラン調」と呼ばれる独特の新喜劇をうみだし、通算500回の公演記録を残した。

 そんな一時代を築いた娯楽の拠点とゆかりの深い「千草」。当時の名残からか、この店には映画や演劇の関係者が多く訪れ、彼らが残した100点あまりの色紙が保存されているという(キャプションより)

 展示されていたのは、東宝ニューフェイス6期生、日活でデビューを飾った「ハーフ美男男優のはしり」岡田真澄のサイン、文学座創立に携わった中村伸郎、その後うまれた「演劇集団円」立ち上げに関わった高橋昌也、岸田今日子、ルパン3世銭形警部で有名な声優・納谷吾郎らによるサイン、詩、風景画などが描かれたもの。ちいさな居酒屋が刻んできた時はそのまま、新宿の街を活気づかせた文化、そこに行ききかう人々のあたたかな交流や賑わい、まちなみや世相の変化を含めて現代まで届けてくれている。

 ひとはその生を終え、まちなみはうつろい、時代は変化していくけれど、変わらず残るもの、昔と今を繋いでくれる証は確かに存在するものだと感じるひとときであった。          (たぶち)
 
会 期 2018年 9月2日 (日)
 休館日 第2・4月曜日(祝休日は翌日休館) 
開演時間 9時30分~17時30分(最終入館17時)
会 場 新宿区立歴史博物館(新宿区三栄町22番地)
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「四谷 三丁目 駅」下車 出口4より徒歩8分
料 金
一般300円 小中学生100円
問合せ 新宿区立新宿歴史博物館〔TEL:03-3359-2131

















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