企画展「山本有三、作家の遍歴」
   

【左】2階展示室 【右】山本有三記念館 入口


 リニューアル休館していた「山本有三記念館」が2018年三月末にリニューアルを終え、4月1日から記念館の二階で企画展「山本有三、作家の遍歴」が開催されている。

 「山本有三記念館」は三鷹市の玉川上水沿い閑静な住宅街の中にあり、レンガ造りの外観、煙突や暖炉などが特徴的なモダンな雰囲気が漂う洋式建築。作家・山本有三が昭和11年から昭和21年までの10年間、家族と暮らした家である。

 企画展では山本有三の劇作家、小説家、議員などの多岐にわたる活動が紹介されている。
 幼少期に芝居好きの母親に連れられてみた芝居に衝撃を覚え、演劇の世界に魅了し、劇作家として活動を始める。家業を継がせられるが、その後上京し、希望していた進学の方向へ。大学卒業後に執筆活動を初め、逆境・貧困のなかの人間の選択に焦点を当てた「生命の冠」や「嬰児殺し」という作品が脚光を浴びた。
 大正15年には長編小説の執筆を始める。そのきっかけを作ったのが「劇作家は長編小説に適している」という考えを持った小説家の菊池寛だった。菊池寛は有三の「わかりやすさ、もっともらしさ、たのもしさ」を評価していたという。
 朝日新聞に初の長編小説「生きとし生けるもの」の連載も劇作家で培った言葉や会話へのこだわりで読み手へ描写が伝わりやすいのだろうか、好評で、「波」や「路傍の石」の作品で国民的作家として知られるようになる。作品の多くに家族の問題や社会問題をテーマに扱うことが多く、複雑な家族関係や、堕胎、私生児、などの問題が作品には描かれ、登場人物達が最良の道を歩もうとする姿が読者の心を掴んだ理由のひとつだ。

 戦後は衆議院議員へと転身し、祝日法や文化財保護法などの制定や当用漢字の制定に携わるなどの活動をみせた。日本国憲法の口語化にも力をいれ「ふりがな廃止論」を提唱。ふりがなを使わず、難しい漢字を使わずに優しい言葉で書くべきだという、伝える事を主とした作家のようだった。

 議員の任期を終えた後、古代史を題材にした作品を生み出そうとして大化の改新や壬生の乱などの古代史に注目し研究を始めた。昭和48年、84歳にして「濁流」の連載を開始するも翌年に没してしまうが、「濁流」は戦史資料が引用されており、戦局の困難の中いかに人間が生きるべきかを書こうとした、有三の作家人生で培ったものすべての集大成になる作品だったのかもしれない。演劇や小説などの物語のみならず社会的にも文化に貢献しつづけた有三の軌跡がここにはあった。
 
会 期 2018年9月2日 (日)
 休館日 月曜日(祝休日は開館、翌日、翌々日休館) 
開演時間 9時30分~17時
会 場 山本有三記念館(三鷹市下連雀2-12-2)
アクセス JR三鷹駅南口より徒歩12分/JR三鷹駅南口シティバスのりば(三鷹の森ジブリ美術館循環ルート・明星学園ルート)から「むらさき橋」下車徒歩2分/その他
入館料
一般300円 団体200円(20人以上)
問合せ 山本有三記念館〔TEL:0422-42-6233

















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