小田急電鉄の線路跡地「下北沢線路街」にこの4月1日にオープンした、新たな複合商業施設「BONUS TRACK」は、2階が住居で1階が店舗という、働きながら暮らす「店舗住宅一体型のSOHO」4棟と4店舗の商業棟からなる。個性豊かなテナントばかりが集まり、飲食店や物販、シェアオフィスにシェアキッチン、住居もあって、ひとつの小さな街のような施設だ。
現在開業が決定している店舗は13店舗。
代田側の角にある「胃袋にズキュン はなれ」は、下北沢の一番街にも店舗があり、ケークサレのような料理系和のスイーツと希少なお酒を合わせるお店。
その隣の「pianoia records」はレコード店。下北沢がレコードの街でもあり、世界中のバイヤーが訪れることもあって、音楽も配信していく。
「本の読める店 fuzkue」は、本を読む人のためのカフェバー。入店は本を読むことが大前提で、私語厳禁という珍しいお店だ。「本を読んでいる人を幸せにしたい」とオーナー。初台のお店につぐ2店舗目だという。遊歩道側の中央棟には3店舗が軒を並べ、いずれも店舗入り口と反対の遊歩道側がテイクアウトスタイルのスタンド型になっている。遊歩道を行き交う通勤通学の人たちのために何か提供したいということで、この3店舗のみ朝から営業している。
「日記屋 月日」は、日本のみならず世界的にも類のない日記専門店。著名人の日記を読んだり、自分で日記を書いたり、日記を書くためのカードなどのグッズも販売し、日記にまつわるカルチャーを発信していく。「日記カードや、月日と記された建物前で写真を撮り、日付を入れて日記風にコメントを書いてSNSにあげたりするなど、これから日記を書いたり読んだりする人たちを増やしていきたい」と内沼CCO。また、スタンドサイドでコーヒーやビールを出していて、日記のカルチャーとの2面性をもっているところも面白い。
その隣の「お粥とお酒 ANDON」は秋田の「あきたこまち」や「比内地鶏」の出汁を使用したお粥やおにぎりに甘味、夜はおでんと日本酒を出すお店。「お客さまといっしょに田植えや稲刈りにいくイベントも企画中です」と小野CEO。
大きな区画となる下北沢側の1階店舗には「発酵デパートメント」。国内外の発酵食品を使った料理や販売をするお店。昨年渋谷ヒカリエのイベントが大好評だったことからお店にしたという。
2階は北沢2丁目から移転した「本屋B&B」という新刊書店。特徴的なのは毎日作家など本に携わる人物によるトークイベントを開催したり、本を眺めながらビールが飲めたり、早朝英会話教室を開講しているところ。書籍販売が通販事業に押されて店舗運営が厳しいなか、チャレンジ的で面白い試みだ。正にこの施設のコンセプトに合致していると言えるだろう。
他にも、福祉施設が母体で養豚場を経営する「恋する豚研究所」というコロッケカフェ。
ビンテージのアパレル小物とか洋服とかを販売するお店の「bed」。
大阪のスパイスカレーの店で、東京では初進出の「ADDA(アッダ)」。
山梨や長野の野菜と果物をフレッシュな状態でジュースにするお店の「Why_?」など、ここにしかないような個性的で魅力的な店が集結している。
シェアオフィスは会員制で、下北沢側のラウンジスタイルのものと、代田側の個別ブーススタイルの2ヵ所を利用できる。洗練されたシェアキッチンや屋台などもあり、イベント開催や開業チャレンジ、交流の場としても活用できる。
下北沢の繁華街から少し離れた、世田谷代田駅との間の静かでマイナーなエリアに、突如誕生したまったく新しいスタイルの複合施設。下北沢の伝統的なカルチャーをしっかり引き継ぎながら、洗練された新しい未来型の街を感じさせる。どこか外国のお祭りにでも来ているようなワクワク感と非日常感、加えて味覚はもちろん、文化的な知的探求心をも満たす。そんなボーナストラックは、意識高い系を中心とした下北沢の新名スポットとなるだろう。
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