長谷川町子記念館(長谷川町子美術館・分館)の2階企画展示室にて、企画展「町子かぶき迷作集」を開催いたします。
長谷川町子は毎月欠かさず歌舞伎を観に行くほどの歌舞伎通でした。歌舞伎好きが高じて、1952(昭和27)年から1956(昭和31)年までの約4年間には『週刊朝日』、『週刊朝日別冊』で歌舞伎をテーマにした漫画15作品を連載しました。また『文藝春秋漫画読本』においても1作品を発表しています。それらは歌舞伎の演目を町子なりにアレンジしたもので、本来の演目のあらすじから大きく展開を変えることも多く、また演目からインスパイアされた創作話もあります。どの作品も明るい笑いを描き続けた漫画家ならではの自由でコミカルな視点で描かれています。歌舞伎の華やかな世界観を伝えるために丁寧に彩色を施した鮮やかな画面からは、町子の歌舞伎愛と意気込みが感じられます。 ↗ |
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↗ 連載中の1955(昭和30)年にはそのうち8作品を収録した単行本『町子かぶき迷作集』を発表しました。町子にとってこの単行本は唯一のオールカラーで描かれた豪華な単行本です。しかし作者の思いとはうらはらに発行部数は思わしくなく、ほどなく絶版を迎えてしまいます。(現在は朝日新聞出版から文庫版が出版されています。)後年には読者からの要望を受けて『サザエさん』や『エプロンおばさん』の単行本の中に一部を再編集して再録することもありましたが、それでもいくつかの作品は雑誌に掲載された限りで世に埋もれてしまったのは実に惜しいことです。
本展では、単行本未収録を含む一連の歌舞伎シリーズの原画をすべて公開しその全貌に迫るとともに、当時の雑誌で紹介された町子の歌舞伎見学の様子や歌舞伎俳優との対談の記事、プライベートでも親交のあった九代目市川海老蔵との関係などをご紹介いたします。また、「サザエさん」や「いじわるばあさん」など他の作品に描かれた歌舞伎をテーマにした作品もあわせてご紹介いたします。
町子の歌舞伎愛を存分に感じていただきながら町子ならではの歌舞伎ワールドをお楽しみください。 |