さよならを言う必要はないかもしれない。けど、。ゆっくりとおやすみなさいと。

もうすぐ死んでしまう少年がいました。眠る事も知らないような元気な少年は、実はモルヒネで痛みを抑えていました。
家族は病人中心の辛い生活。ですが、その少年が元気な事が皮肉にもこの家庭の支えでした。

お姉ちゃんは、毎日学校をサボっては少年に本を読んでくれます。
看護婦さん、隣の病室のおじいちゃん、入り口の受付の女の子、いじめっ子、病院の回りの人物を登場させる作り話は、ピラミッドのお話でした。

「いつか体が治ったら、海に行こうね。そうして、でっかいピラミッドを作ろうね」
少年は、お姉ちゃんと約束するのでした。でも、少年は、もうすぐ死んでしまいます。
それを知っているのは、お母さんだけでした。

少年は、モルヒネで夢をみます。お姉ちゃんが話していた物語の夢。
少年はピラミッドを目指して旅をします。ピラミッドには、すごい宝物が待っているのですから。
だけど、宝の中にいたのは包帯にくるまれた自分。宝箱は自分が眠る為の棺桶だったのだ。
少年は自分が死ぬ事を悟って死んでいきます。

「ピラミッドは、王様の眠るところさ」
そうして少年は夢の中の海でピラミッドをつくるのです。自分が眠る為の、大きな大きなピラミッドを。
「夢の中でも、光があるから寂しくなんてないのさ」
そう言い残して、少年は皆の前に二度と姿を現す事は無かったのでした。

現実と空想が折りなす、アンリアルファンタジー。